いじめの避難訓練とは|援助要請行動を向上させる学校の取り組み

学校では、地震や火災に備えて避難訓練を行います。子どもの命の危険に関わるものだからです。
いじめ問題でも、子どもの命に関わるという点では一緒です。子どもの自死人数が増え続けている以上、地震や火災と同じように避難訓練が必要だという考えがあります。
本記事では、いじめに直面したときの行動を練習する取り組みである「いじめの避難訓練」について、紹介します。
いじめの避難訓練とは
いじめの避難訓練とは、いじめに直面したとき、誰かに助けを求める方法を体験的に学ぶ授業です。
いじめ問題を一人で抱え込まず、信頼できる人へ相談できるよう、具体的な場面を想定して練習します。
いじめ問題の研究者である小沼豊氏は、「小学生の援助要請を促進させる授業実践─5年生の授業実践「いじめの避難訓練」を通して─」の論文中にて、小学校5年生を対象としたいじめの避難訓練の授業を実践しています。
なぜいじめの相談をする練習が必要なのか
いじめを受けたとき、子どもがすぐに相談できるとは限りません。
「ほかの人に知られたくない」、「どのように伝えたらよいか分からない」、「相談しても解決しないかもしれない」、このような不安があると、助けを求めることをためらってしまいます。
いざというときに動くためには、相談する場面や言葉が事前にイメージできることが大切です。そこで、いじめ相談におけるロールプレイが重要視されています。
いじめの避難訓練によって援助要請行動が向上する
小沼氏(2021)の研究では、小学校5年生の2クラス、合計68名を対象として、実験群と統制群の比較検討から効果が検証されています。
調査は、①5年生の2クラス(実験群と統制群)を用意し、事前調査(Pretest)、事後調査(Posttest)そして、3週間程度の期間をあけた調査(Follow-up)から実施された。その結果、授業実践を行った実験群において、被援助志向性、援助要請行動の向上が確認でき、その効果は3週間後も持続させていることが明らかになった。
(小沼豊,2021「小学生の援助要請を促進させる授業実践─5年生の授業実践「いじめの避難訓練」を通して─」より)
いじめの避難訓練を実施したクラスでは、相談行動において重要な概念である、被援助志向性と援助要請行動の向上が確認されています。
小沼氏はこの結果について、「実際に声に出し、『援助を求める/求められる』というプロセスを体験することで、場面を想定したイメージがつきやすくなったと考えられ、援助要請行動のコストの低減に表れたと解釈できる。」と述べています。
いじめの避難訓練の導入
いじめの避難訓練は、北海道教育委員会の「いじめ未然防止教育プログラム」(2026)に導入されています。
実際に効果が検証されているいじめ防止の取り組みは少なく、さらにいじめの避難訓練は実施コスト的にも、どの学校でも実施できるような取り組みです。
各自治体や各学校が、学校いじめ防止基本方針における「いじめ防止プログラム」を策定するにあたり、いじめの避難訓練を導入することは、非常に合理的かと思われます。

まとめ
いじめの避難訓練は、いじめの知識を教えるだけの授業ではありません。
いじめを受けたり目撃したときに誰へ相談するのか、どのように伝えるのかを、実際に練習する取り組みです。
地震や火災への備えと同じように、いじめについても「起きてから考える」のではなく、起きる前から行動を確認しておくことが大切です。
子どもが安心して助けを求められるように、相談する経験と、相談を受け止めてもらえる経験を学校の中で積み重ねていく必要があります。
