スクールカーストとは|いじめの原因となる階層構造をわかりやすく解説

いじめの背景には、個人要因だけでなく環境要因として、学級内に存在する集団構造が大きく関係しています。

学校のクラスという閉鎖的な空間の中で、生徒間の序列が形成される現象を、インドの身分制度になぞらえてスクールカーストと呼びます。

スクールカーストとは、クラス内のステイタスを表す言葉として、近年若者たちの間で定着しつつある言葉です。従来と異なるのは、ステイタスの決定要因が、人気やモテるか否かという点であることです。上位から「一軍・二軍・三軍」「A・B・C」などと呼ばれます。
(森口朗, 2007「いじめの構造」より)

スクールカーストはいじめとの関係も言及されており、教育問題を考える上で避けては通れない概念です。

本記事では、スクールカーストの概要や、いじめとの関係、そして防止に向けた視点について解説します。

目次

スクールカーストの概要

スクールカーストとは、主に学級や学年といった集団の中で、生徒同士が暗黙のうちに形成する上下関係の階層構造を指します。

スクールカーストの定義

スクールカーストの定義についてですが、研究者によって表現は多少異なります。

今回は小原氏(2021)による定義を紹介します。

「スクールカーストとは、小学校の高学年から中学、高校のクラスにおける、生徒の閉鎖的なグループ間に見られる、認識された人気に基づく上下関係の階層構造である」
(小原一馬, 2022「スクールカーストはなぜ生まれ、それは「悪い」ものになってしまうのか―スクールカースト生成の歴史的要因と上位者の攻撃性が高まる要因の考察―」より)

この定義のポイントとして、上下関係が根拠のあいまいな”人気”に基づくということや、グループの閉鎖的性格が基になっているという点が挙げられています。

また、主にスクールカーストが出現するのは、小学校高学年から中学・高校に至るまでが多いようです。私の経験としてもそれは確かにと思う部分です。

スクールカーストの構造

スクールカースト

スクールカーストの一般的な構造としては、一軍・二軍・三軍といったピラミッド型の階層で表現されています。

企業におけるヒエラルキー型組織もピラミッド型で表すことが多く、身分や力関係を表す際はこのようなイメージが一般的のようです。

(「いらすとや」より)

いらすとやにおけるスクールカーストの画像も、上図のようなピラミッド型のデザインとなっています。

スクールカースト一軍・二軍・三軍の特徴

上位の一軍における子どもの特徴としては、活発、美形、ヤンチャ気味であるような子どものイメージで描かれることが多く見られます。

逆に、下位の三軍における子どもの特徴としては、不格好に描かれていたり、おとなしめでオタク気質なように描かれることが多いイメージです。

また、内藤氏によれば、スクールカーストの身分を決めるのは「ノリ」であるという旨も述べられています。

基本的に身分が高いのは、クラスや仲間内の「ノリ」の中心にいて、「ノリ」の勢いを自分自身の勢いにできる立場にあり、攻撃力が強くて恐れられる人物である。また、「ノリ」が良い者は上位に、「ノリ」が悪い者は下位になる。
(内藤朝雄, 2012「いじめ加害者を厳罰にせよ」p.56より)

この身分関係は何となく、暗黙のうちに形成されていくといいます。

本来、人の容姿や特徴に格付けするようなことは望ましくないのは勿論ですが、このような認識が広まっているということは、いじめなどの教育問題を考える上で考慮すべき現状です。

スクールカーストはいつから日本で普及したか

スクールカーストという言葉が日本でいつから普及したかについてですが、2000年代から徐々にインターネット上で普及したという説が濃厚です。

スクールカーストについて詳しく踏み込んだ本としては、2007年の森口朗氏による「いじめの構造」や、2012年の鈴木翔氏による「教室内カースト」などが挙げられます。

また、アメリカではスクールカーストに近い概念はクリーク(clique)と呼ばれ、古くから言及がされていたようです。

小原氏(2022)によれば、クリークの人気に基づく階層性を示した最初期の研究として、Hollingshead氏(1949)による「Elmtown’s Youth」が挙げられています。

スクールカーストの問題点

スクールカーストの問題点の一部として、たとえば以下のようなものが挙げられています。

  • 上位から下位への理不尽な振る舞い
  • 居心地の悪さを規定する要因となる
  • 一人ぼっちは最下層
  • 自信をなくし、学校生活への適応に大きな影響
    (鈴木, 2012;土井, 2009)

これらを鑑みるに、現在の学校システムにおける問題点として、一人でいることに対するプレッシャーが大きいことや、いじめに繋がりやすいことが挙げられます。

子どもの安全な学校生活のためにも、スクールカーストの発生や影響を抑える取り組みが求められます。

スクールカーストはいじめの原因となる

スクールカーストは、いじめの温床となりやすい構造を持っています。スクールカーストがどのようにいじめの原因となるのか、その関係を詳しく見ていきましょう。

スクールカーストといじめとの関係

「スクールカーストの低さはいじめの対象になるリスクを上げますが、いじめの対象になることでスクールカーストが下がるというように、両者は互いに原因と結果の関係になっています。」
(森口朗, 2007「いじめの構造」p.59より)

スクールカーストにおいて下位に位置づけられると、加害者はいじめてもいい相手なのだと認識しやすく、いじめの対象となるリスクが上がると予想されます。

また、逆にいじめの対象となることで、そのような雰囲気がクラス内において醸成されてしまい、スクールカーストが下がるという見方がされています。

閉鎖的な環境がいじめを助長する

学校は、生徒たちに閉鎖空間で集団生活を送らせるだけでなく、構造的に「仲良し」の強制を行う
(内藤朝雄, 2012「いじめ加害者を厳罰にせよ」p.37より)

内藤氏は、学校という集団生活において生徒は「仲良し」を強いられており、そこではいじめが蔓延するのだと述べています。

前述したスクールカーストの定義としてグループの閉鎖的性格が挙げられていましたが、閉鎖的な環境がスクールカーストを形作り、それがいじめの温床となって、更には不登校や自殺などの重大事態へと繋がっていると考えられます。

閉鎖的な環境がスクールカーストに繋がる

また、内藤氏によれば、自分にとって加害者であったり、敵であったりする人間とも仲良くすることを強制されるような環境でも、いじめがはびこりやすいと述べられています。

いじめの被害を受けながらも被害者は笑って反応をしていたという事例もありますが、閉鎖的な環境であり加害者とも仲良くしなければいけないという潜在意識が、そのような反応をさせているのだと予想されます。

スクールカーストが顕著なクラスにおいては、上位層である一軍の言うことは正しいというような雰囲気も形成されやすいと考えられます。このように閉鎖的環境がスクールカーストを生み、それがいじめの原因となるといえます。

スクールカーストに関する研究

スクールカーストに関連した研究もいくつか行われており、例えばコミュニケーションスキルや学校適応感、学級内地位への認知との関連を調べた論文などがあります。

貴島氏らの研究においては、スクールカーストに関する興味深い尺度が作成されているので紹介します。

スクールカースト特性尺度

貴島・中村・笹山(2017)によるスクールカースト特性尺度(α= .930)は、52項目4因子となっています。

第1因子は「学級リーダー」因子、第2因子は「ツッパリ」因子、第3因子は「社交性」因子、第4因子は「非ヲタク」因子と命名されています。

また、このスクールカースト特性尺度を使用した研究の論文において、以下のような考察がされています。

学級集団における階層は,個人の特性によって規定されているわけではなく,所属しているグループの特性によって規定されている可能性が示されたのである。
(貴島侑哉・中村俊哉・笹山郁生, 2017「スクールカースト特性尺度の作成と学級内地位との関連の検討」より)

これまでスクールカーストにおける一軍・二軍・三軍などの身分は、主に個人の特性によって規定されるという見方が多かったのですが、それよりも所属グループの特性に依るものが多いのではという可能性があるわけですね。

確かに、子どもたちがよりカーストの高い集団に所属しようと必死に努力をするという姿も創作物などでよく見られることから、このような見方は納得のいく部分です。

スクールカーストの防止に向けて

スクールカーストの防止に向けて、私たちはどのように対策を行えばいいのでしょうか。

まず、教員の関わり方、学級活動の設計、集団内での日常的な働きかけなど、学校環境そのものが大きな役割を果たすと考えられます。

スクールカーストを防止する教員の働きかけ

実際に、スクールカーストから生徒を守るための研究として、川崎氏による論文が挙げられます。川崎氏はスクールカースト問題の予防・防止・低減をする教員側の要因として以下の点を挙げています。

予防・防止の観点について,どの生徒にも平等で,一貫した対応をすること,生徒を教員自らの視点で適正に正当に評価する視点をもち,生徒の適材適所の活躍場所をつくるなどの環境づくり,居場所づくりの重要性が示された。また,信頼を得ている適切なリーダー層を選出し,リーダー層を育成し,リーダー層に学級の様々なグループを結びつける役割を担わせるなどの絆づくりも示唆された。
(川崎知已, 2022「脅威的階層性学級(スクールカースト)から生徒を守る教員の姿勢・指導の探索的研究」より)

教師が生徒に対して平等に接することは勿論のこと、スクールカーストに対しての理解を持って、環境づくりや居場所づくりを進めていくことが重要となるわけですね。

スクールカーストの存在を踏まえたいじめ対策

いじめ問題についてスクールカーストの視点から論じた田中氏の論文では、いじめやスクールカーストは
必ず生じるものであるとし、それを踏まえた改善策として以下の二点を提示しています。

・いじめ問題を解決するには、いじめと犯罪の区別をつける必要がある。
・いじめ問題の背景には社会環境要因が存在し、その解決にはスクールソーシャルワークをはじめとする社会福祉の専門知識を備えた教職員の配置を進展させることが必要である。
(田中秀和, 2015「スクールカースト論からみたいじめ問題の理解と対応」より)

確かに人間に個性がある以上、各個人に人気の差が出ること自体は当然とも言えます。

そのような現状を踏まえて、いかに生徒たちの心の安全を守っていくかが大事であるという考え方というわけですね。

まとめ

スクールカーストとは、子ども同士の関係性の中で自然発生的に生まれる階層構造であり、必ずしも明確なルールや意図があるわけではありません。

しかし、この暗黙の序列が固定化されることで、立場の弱い子どもが発言しにくくなったり、排除や嘲笑の対象となったりするなど、いじめの原因となる危険性をはらんでいます。

スクールカーストは大人の目に見えにくい形で進行します。スクールカーストの問題に向き合うためには、いじめが起きた後の対応だけでなく、階層が固定化されにくい環境づくりが重要です。

私の意見としては、いじめが減らない現状に対して、クラス制は解体すべきであると考えています。クラスの一員というような感覚を無くすのです。部活も同様です。これはいじめ問題に詳しい内藤朝雄氏の意見と類似するものです。

問題解決のためには、群生秩序をはびこらせる現行の教育制度を廃し、新しい制度を実施する必要がある。
(内藤朝雄,2009「いじめの構造-なぜ人が怪物になるのか」)

内藤氏は新しい制度として、学級制度を廃止し、自由な社会が必要であると述べています。つまりは子どもたちに自身に加害を加える者から「距離をとる権利」を保証しなければならないというわけです。

例えば大学ではいじめが問題になりにくいという現状があります。

それを踏まえ、閉鎖的な環境である小学校・中学校・高校も、大学のようなオープンな環境に変えていくことが、スクールカーストやいじめの予防に繋がる環境的アプローチだといえるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

いじめ対策Web代表。主な経歴に公立高等学校教員やライティング業など。徳島県出身。
現在は博士号の取得に向けて大学院に在籍中。

目次