NoTrap!とは?イタリアのいじめ防止プログラム

いじめは世界共通の課題であり、各国でさまざまな予防・介入プログラムが開発されています。

その中でも、イタリア発の「NoTrap!」プログラムは、生徒主体・ピアサポートを軸にした先進的ないじめ防止プログラムとして国際的に注目されています。

本記事では、NoTrap!プログラムの概要、特徴、効果などについて解説します。

NoTrap!は生徒が主体となり、ネットいじめにも効果のある革新的なプログラムです。

目次

NoTrap!プログラムとは

NoTrap!プログラムは、正式名称を「Noncadiamointrappola (Let’s not fall into the trap!)」といいます。長いので、略称である「NoTrap!」が一般的にも使用されています。

NoTrap!はイタリアで2008年に開発され、その後の評価と研究を通じて改良されてきました。

2016年には論文「Noncadiamointrappola! Let’s not fall into the trap!: Online and school-based program to prevent cyberbullying among adolescents.」(Menesini, E., Palladino, B. E., & Nocentini, A. , 2016)にて、第3版プログラムの実証的評価が行われています。

Peer-Led(ピア主導)によるいじめ防止プログラム

NoTrap!は、Peer-Led(ピア主導)モデルのプログラムであり、生徒は介入の対象であると同時に、介入の主体となります。

ピアとは「仲間」のことを意味します。教育分野ではピアサポートなど、生徒同士の取り組みに関してよく使われます。

具体的なプログラムの内容としては、いじめ対策を促進するウェブサイトの開発に生徒が積極的に参加することになります。

「このプロジェクトでは、2校の生徒が協力して、いじめやネットいじめに対抗するピアツーピアコンテンツを促進するウェブサイトの設計と開発を行いました。翌年度(2009~2010年)には、さらに多くの学校が参加しました。」
Empowering Students Against Bullying and Cyberbullying: Evaluation of an Italian Peer-led Model」(Menesini et al. 2012)

まず参加校およびクラスに対し、ネットいじめといじめに関する問題への意識向上とコミュニケーション促進を目的としたプロジェクト説明会が実施されます。

その後、参加クラスごとにピアエデュケーターが選抜され、これらの生徒はオンラインいじめ対策フォーラムのモデレーターとして活動し、ディスカッションスレッドを管理することになります。

従来型のいじめとネットいじめの両方を防止する

「NoTrap!は、オンラインと学校をベースとしたイタリアの普遍的な介入であり、仲間主導のアプローチを利用して、従来型のいじめとネットいじめの両方を防止し、対処するものである。中学生向けに設計されている。」
10 – Online and school-based programs to prevent cyberbullying among Italian adolescents: What works, why, and under which circumstances」(Menesini et al. 2018)より

NoTrap!の特徴として、ネットいじめに効果を発揮するプログラムであることが挙げられます。

これは従来のいじめ防止プログラムには中々ない特徴であり、現代のインターネット社会に適していると共に、差別化されるポイントでもあります。

NoTrap!プログラムのいじめ減少効果

NoTrap!プログラムがいじめに対してどれくらい効果があるのか、まとめます。

いじめ防止プログラムの中で最もいじめ被害の軽減に効果的

NoTrap!は、2019年の「Examining the Effectiveness of School-Bullying Intervention Programs Globally: a Meta-analysis」(H Gaffney et al., 2019)において、海外における主要ないじめ防止プログラムの中で、最もいじめ被害の軽減に効果的であったと述べられています。

本論文ではNoTrap!、KiVa、OBPP、ViSCという4つの主要ないじめ防止プログラムの効果検証が行われました。

その4つのプログラムのうち3つが全校的なアプローチを採用しているのに対し、NoTrap!は全校的なアプローチでないという特徴があります。しかし、結果としていじめ被害の軽減に最も効果的であったのはNoTrap!であったと報告されています。

効果に関して、メタ分析の結果、全校的なアプローチが必ずしも最も効果的であったわけではないことが示唆されました。OBPPはいじめの加害と被害の両方を減らすのに非常に効果的でしたが、KiVaプログラムはわずかな効果しかなく(加害と被害がそれぞれ約9%と11%減少)、ViSCプログラムは望ましくない効果をもたらしました。ViSCプログラムの効果サイズは統計的に有意ではありませんでしたが、オッズ比はいじめの加害と被害がそれぞれ約4%増加したことに相当します。さらに、全校的なアプローチではないNoTrap!は、いじめの被害を減らすのに最も効果的な介入であり、約37%の減少を示しました。NoTrap!では、訓練を受けた生徒がモデレーターとしてオンラインフォーラムを作成し、参加者のいじめに関する質問や懸念に回答しました。
「Examining the Effectiveness of School-Bullying Intervention Programs Globally: a Meta-analysis」(H Gaffney et al., 2019)より

いじめとネットいじめの両方を減少させる

第3版プログラムの有効性を評価した研究では、介入校における事前テストと事後テストの両方でいじめとネットいじめの減少が報告されたという結果が述べられています。

異なる高校1年生の青少年(平均年齢14.91歳、標準偏差0.98歳)を対象とした2つの準実験的試験を実施しました。試験1(対照群n = 171、実験群n = 451)では、事前、中間、事後テストのデータの潜在成長曲線モデルにより、介入によってすべての目標変数(被害、いじめ、ネット被害、ネットいじめ)の経時的変化が有意に予測されることが示されました。具体的には、目標変数は対照群では安定していましたが、実験群では経時的に有意に減少しました。6か月後の追跡調査では、長期的な効果も確認されました。試験 2 (対照群、n = 227、実験群、n = 234) では、性別の緩和効果が調査され、実験群では時間の経過と共に (テスト前とテスト後) いじめとネットいじめが減少したと報告されましたが、対照群では減少せず、この減少は男の子と女の子で同様でした。
Evidence-based intervention against bullying and cyberbullying: Evaluation of the NoTrap! program in two independent trials」(Palladino et al. 2016)より

NoTrap!は日本の学校に導入できるのか

NoTrap!はオンラインを用いた特徴的なプログラムですが、日本の学校にいじめ対策として導入できるのでしょうか。

2023年の論文「科学的根拠に基づくいじめ予防策の適用可能性」(満名, 2023)においては、4つの主要ないじめ予防策(NoTrap!・KiVa・OBPP・ViSC)における日本への適用可能性を検討していますが、4つのうちNoTrap!だけが実施不可能という判断がされたと述べられています。

日本の教育現場での実施について, No Trap!を除く3つのプログラムにおいて,実施可能であると判断された。また実施不可能の理由として,生徒主体で進めることの難しさや,統括する担任の先生の技量についてあげられた。
「科学的根拠に基づくいじめ予防策の適用可能性」(満名, 2023)より

やはり一般的な判断として、オンラインでの取り組みを含めたPeer-Led(ピア主導)モデルは運営が難しいのではという危惧があると思われます。

しかしICT化やチーム学校が進む今、実施のハードルも段々と下がっている可能性はありますので、高い効果が期待されるNoTrap!に挑戦することも選択肢の一つかと思われます。

まとめ

NoTrap!は、ピア(仲間)主導の取り組みであり、教室だけでなくオンラインに焦点を当てたいじめ防止プログラムです。

教室からオンラインの仲間主導のフォーラムに移行することは、いじめの被害をより効果的に減らすための介入プログラムを改善する方法となるかもしれない。これは、重要な問題を強調しながら、学生をいじめ対策に積極的に参加させるための、実用的で費用対効果の高い方法でもあるかもしれない
「Examining the Effectiveness of School-Bullying Intervention Programs Globally: a Meta-analysis」(H Gaffney et al., 2019)より

昨今ではネットいじめも巧妙化しており、対策に頭を悩ませる自治体や学校も多いと予測されます。

日本で各学校がいじめ防止プログラムを策定するに当たり、NoTrap!の取り組みを参考にすることで、実用的かつ効果的にいじめ及びネットいじめを防止できる手立てとなるかもしれません。

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この記事を書いた人

いじめ対策Web代表。元高等学校教員。徳島県出身。
現在は博士号の取得に向け、大学院で心理学を学んでいます。

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