いじめと犯罪の違いとは|法律による定義や事例を解説

いじめと聞くと、多くの人は学校の中の人間関係トラブルを思い浮かべるかもしれません。

一方で、ニュースでは子どもによる暴行や脅迫による書類送検といった形で、犯罪として報道されるケースも増えています。

XなどのSNSで暴力動画が拡散され、私刑による社会的制裁が行われる事例も増えました。多くのコメントの中には、「いじめではなく犯罪だ」という声も多く見られます。

では、私たちが日常的に使っている、いじめと犯罪という言葉は、いったい何が違うのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

この記事では、法律上の定義や具体例を踏まえながら、いじめと犯罪の違いを整理していきます。

目次

いじめと犯罪の違い

いじめと犯罪は、それぞれ定義が別のものです。

しかし、まったく別物というわけではなく、いじめでもあり犯罪でもあるという事例は多く存在します。

いじめと犯罪の違い

いじめと犯罪行為の違いを、図に示したものが上図になります。

悪質な暴力などの事例に対し、「いじめではなく犯罪ではないか?」という声も多くみられますが、正しく言うなら「いじめでもあり犯罪でもある」という表現が適切です。

文部科学省もいじめに犯罪が含まれると定義している

文部科学省による「いじめの防止等のための基本的な方針」(国の基本方針)において、以下のような記述が認められます。

これらの「いじめ」の中には,犯罪行為として取り扱われるべきと認められ,早期に警察に相談することが重要なものや,児童生徒の生命,身体又は財産に重大な被害が生じるような,直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる
「いじめの防止等のための基本的な方針」p.6より

また、このような事例については、教育的な配慮や被害者の意向への配慮の上で、早期に警察への相談・通報と、警察と連携した対応を取ることが必要であることが述べられています。

文科省も、犯罪クラスの悪質ないじめに対しては、積極的な警察の活用を推奨しているわけですね。

いじめと犯罪の定義

それでは、いじめと犯罪の定義はどう違うのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

いじめの定義とは

いじめの定義の根拠として、平成25年(2013年)9月に施行されたいじめ防止対策推進法が挙げられます。

これによると、現行の法律によるいじめの定義は、以下のようになっています。

この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
「いじめ防止対策推進法」第2条より

簡単に言えば、被害を受けた側の子どもがつらいと感じたら、それはいじめです。

現行の法律に基づくいじめの定義は、非常に広く設定されており、被害者の視点に寄り添ったものとなっています。

いじめというと軽度な嫌がらせというイメージがある方もいるかもしれませんが、程度がどうであれ、被害者が苦痛を感じているならそれはいじめだといえます。

犯罪の定義とは

犯罪の定義とは、刑法に規定される「構成要件に該当する、違法で有責な行為」を一般的に指すようです。

分かりやすく言えば、法律などによって罰せられるような行為が、犯罪行為というわけです。

たとえば、人に石をぶつけたりすれば刑法の暴行罪に当たりますし、神社の柱に傷をつけるような行為であれば刑法の器物損壊罪に該当します。

ごみのポイ捨てや、公共の場所でつばを吐く行為などの軽犯罪も含めれば、犯罪の範囲もそれなりに広いと言えます。

いじめが犯罪になる事例

いじめでもあり、犯罪とも定義される可能性のある具体的な例を挙げていきます。

いじめの内容該当する可能性のある罪
殴る、蹴る、突き飛ばす暴行罪・傷害罪
持っているものを隠す、壊す器物損壊罪
悪口を言う、SNSに悪口を書き込む、言いふらす名誉毀損罪・侮辱罪
お金を無理やり奪う、カツアゲ恐喝罪・強盗罪
パシリをさせる、土下座させる強要罪
「先生にチクるな、殴るぞ」などと脅す脅迫罪
進路に立ちふさがって邪魔をする軽犯罪法違反

これらに挙げたもの以外にも、犯罪と認められるようなものもあると考えられます。

迷ったら、学校および警察に連絡して聞いてみるのも手だと思います。

子どもでも犯罪者には法的責任が生じる

現在の法律では、14歳未満は刑事責任能力がなく(刑法41条)、逮捕や刑事裁判の刑罰は科されません。

しかしながら、14歳未満なら何をしても捕まらないというのは誤解です。例外として、特に必要と認められる場合は14歳未満の少年も、少年院送致されることがあります。

また、犯罪を起こしたのが14歳未満でも、以下のような法的責任が生じます。

刑事上の責任:
14歳未満でも犯罪行為に及んだ場合、「触法少年」として警察の捜査および児童相談所の措置や、家庭裁判所に送致する対象となる可能性があります。

民事上の責任:
14歳未満で責任能力がない場合、民法714条に基づき、親権者などの監督義務者が代わりに損害賠償責任(慰謝料)を負うことが一般的です。

市町村の教育委員会も、悪質ないじめを行った加害者に対しては、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることが可能です(学校教育法第35条)。

また、罪を犯した14歳以上20歳未満の者は「犯罪少年」として、家庭裁判所の少年審判を受けるのが一般的です。

まとめ

教育現場において問題になるのは、「いじめだから犯罪ではない」「子どものやったことだから」といった誤った認識です。

現実には、いじめの中には明確な犯罪行為が含まれるケースもあり、その見逃しが被害の長期化や深刻化につながってきました。

重要なのは学校が抱え込まないことであり、犯罪性が疑われる場合は即座に外部機関と連携する必要があります。

学校は教育の場として閉鎖的な環境になりやすく、警察の介入に抵抗をもつような教員も少なくないと思われます。

しかし、悪質ないじめから子どもを守るためにも、いじめや犯罪行為を軽視しない姿勢と、正しい理解こそが教職員を中心とした大人に求められるといえるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

いじめ対策Web代表。主な経歴に公立高等学校教員やライティング業など。徳島県出身。
現在は博士号の取得に向けて大学院に在籍中。

目次