学校いじめ防止基本方針とは|概要と小学校・中学校の公表例

いじめ問題への対応は、個々の教員による努力だけでなく、学校全体としての組織的・計画的な取り組みが不可欠です。
その指針となるのが「学校いじめ防止基本方針」です。
学校いじめ防止基本方針の策定は、いじめ防止対策推進法の第十三条によって定められた学校の義務です。また、各学校は当方針をホームページなどで公表すると共に、児童生徒や保護者に説明を行う必要があります。
本記事では、学校いじめ防止基本方針の概要や、実際に小学校や中学校で公表されている例について紹介します。

学校いじめ防止基本方針の例は、特に優れているものを選んだので、ぜひ参考にしてみて下さい。
学校いじめ防止基本方針とは
まずは学校いじめ防止基本方針の基礎的事項や、法的根拠について解説していきます。
学校いじめ防止基本方針の策定は法律により定められている
(第十三条)
学校は、いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し、その学校の実情に応じ、当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めるものとする。
各学校が学校いじめ防止基本方針を策定することは、いじめ防止対策推進法の第十三条によって定められています。
策定に当たっては、条文に「いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し」とあることから、国の基本方針や、各自治体における基本方針の内容を踏まえたうえで作成しなければいけません。
学校の実情に応じて方針を定める必要がある
前述した第十三条の条文内に「その学校の実情に応じ」とあることから、各学校の特色や状況を踏まえたうえで、効果的と思われる対策や方針を定める必要があります。



つまり学校いじめ防止基本方針には、一定のオリジナリティが求められるわけですね。
多くの学校のいじめ防止基本方針を見ていると、中には他の学校の基本方針をコピー&ペーストしたのか、内容がほとんど一緒という事例も散見されます。
このような基本方針は言語道断です。法に定める「学校の実情に応じ」という部分を満たしていないことから、法令違反であるとも言えるでしょう。
PDCAサイクルで定期的に見直しを行う必要がある
学校の実情は時間の経過によっても当然変化するため、学校いじめ防止基本方針は定期的に点検や見直しを行う必要があります。
実際に、いじめの防止等のための基本的な方針(国の基本方針)によれば以下のように述べられています。
より実効性の高い取組を実施するため,学校いじめ防止基本方針が,当該学校の実情に即して適切に機能しているかを学校いじめ対策組織を中心に点検し,必要に応じて見直す,というPDCAサイクルを,学校いじめ防止基本方針に盛り込んでおく必要がある。
「いじめの防止等のための基本的な方針」p.25より
上記では「必要に応じて見直す」という表現がされていますが、PDCAサイクルの趣旨を鑑みて、最低でも毎年一回は必ず見直しを行う必要があると考えられます。



全く更新がされている気配がない学校いじめ防止基本方針よりも、定期的に更新や改定が行われている方が信頼感がありますよね。
学校いじめ防止基本方針を公表する必要性
学校いじめ防止基本方針は、各学校のホームページ等で公表される必要があります。
また、児童生徒の入学時や各年度の開始時には、必ずその内容を説明することと定められています。
策定した学校いじめ防止基本方針については,各学校のホームページへの掲載その他の方法により,保護者や地域住民が学校いじめ防止基本方針の内容を容易に確認できるような措置を講ずるとともに,その内容を,必ず入学時・各年度の開始時に児童生徒,保護者,関係機関等に説明する。
「いじめの防止等のための基本的な方針」p.25より
具体的には、入学説明会・保護者会・全校集会などの機会に、プリント等で資料を提示しつつ内容の説明を行う必要があると考えられます。
学校いじめ防止基本方針に定めるべき内容
学校いじめ防止基本方針に定めるべき内容としては、いじめの防止、早期発見、事案対処、教育相談体制、生徒指導体制、校内研修などに関わる事項が挙げられています。
学校いじめ防止基本方針には,いじめの防止のための取組,早期発見・いじめ事案への対処(以下「事案対処」という。)の在り方,教育相談体制,生徒指導体制,校内研修などを定めることが想定され,いじめの防止,いじめの早期発見,事案対処などいじめの防止等全体に係る内容であることが必要である。
「いじめの防止等のための基本的な方針」p.24より
また、いじめ防止対策推進法の立案に携わった参議院議員の小西氏によれば、学校いじめ防止基本方針の構成において最重要事項となるのは、「いじめの防止プログラム」及び「早期発見及び事案対処のマニュアル」とされています。
「いじめ防止対策推進法の解説と具体策」(2014, 小西洋之)p.83より
他にも、学校が組織的かつ実効的にいじめの問題に取り組むに当たって中核となる役割を持つ「学校いじめ対策組織」の構成や活動等について、詳しく記載する必要があります。
学校いじめ防止基本方針の中核的な策定事項は,同時に学校いじめ対策組織の取組による未然防止,早期発見及び事案対処の行動計画となるよう,事案対処に関する教職員の資質能力向上を図る校内研修の取組も含めた,年間を通じた当該組織の活動が具体的に記載されるものとする。
「いじめの防止等のための基本的な方針」p.25より
小西氏の著書においても「本条の委員会組織の構成や運営の在り方等の詳細について、各学校のホームページなどで公開される必要があります。」と述べられています。
「いじめ防止対策推進法の解説と具体策」(2014, 小西洋之)p.151より



学校いじめ対策組織の詳しいメンバーや、いじめ発見時は誰に相談すべきか(相談・通報の窓口)に関する事項の提示も必要だと考えられます。
更に、いじめ発見時のフローチャートなどが分かりやすく図示化され、いじめ被害者がどのように救われるのかといったことが明確に分かる内容であれば、学校および学校いじめ対策組織への信頼に繋がると考えられます。
学校いじめ防止基本方針を定める意義
学校いじめ防止基本方針を定める意義について、国の基本方針では以下のように述べられています。
・ 学校いじめ防止基本方針に基づく対応が徹底されることにより,教職員がいじめを抱え込まず,かつ,学校のいじめへの対応が個々の教職員による対応ではなく組織として一貫した対応となる。
・ いじめの発生時における学校の対応をあらかじめ示すことは,児童生徒及びその保護者に対し,児童生徒が学校生活を送る上での安心感を与えるとともに,いじめの加害行為の抑止につながる。
・ 加害者への成長支援の観点を基本方針に位置付けることにより,いじめの加害者への支援につながる。
「いじめの防止等のための基本的な方針」p.24より
まず一つ目に、 学校いじめ防止基本方針に基づく対応は、教員によるいじめの抱え込みを防止し、組織的な対応を進める上で重要ということですね。
二つ目に、学校いじめ防止基本方針が児童生徒からの信頼感(安心感)に繋がり、そこからいじめの加害行為の抑止に繋げようという狙いがあるようです。


三つ目に、加害者への成長支援の観点を位置づけることで、いじめの加害者への支援に繋げようという意図があるようです。しかし、この点に関しては否定的な意見も見られる部分であり、加害者へは毅然とした処罰を与えることを望む声も見られます。加害者への対応についてはいじめの度合いや状況によっても変わってくるため、記載する際の表現には注意する必要があると考えられます。



まず一番に優先されるべきは被害者の保護および心身の健康であることは明白です。その上で加害者への対応方針も考えましょう。
学校いじめ防止基本方針の例
小学校と中学校における学校いじめ防止基本方針の具体例として、特に優れていると感ぜられるものを紹介します。
小学校における学校いじめ防止基本方針の好例
小学校における学校いじめ防止基本方針の好例としてご紹介したいのは、岩手県における滝沢中央小学校の学校いじめ防止基本方針です。
当該校の方針が優れている点として、まず図示が非常に分かりやすいことが挙げられます。
具体例として、いじめ防止対策のための組織についての図を紹介します。


このように、いじめの訴えから解決までのプロセスが具体的に分かりやすく示されています。前述したように、いじめ発見時のフローチャートによっていじめ被害者がどのように救われるのかが明確に示されていれば、学校および学校いじめ対策組織への信頼へと繋がります。
次のポイントとして、いじめ相談窓口がパターン別で詳しく示されていることです。


このようにいじめ相談を誰にすれば良いかが示されていると、安心感が感ぜられます。
一つ気になったところとしては、子ども及び保護者からの相談先が「全教職員」となっているところです。先に挙げた「いじめ防止対策のための組織についての図」では、いじめ相談窓口の代表として「生徒指導主事・教育相談担当・養護教諭」が記載されているため、こちらの図でもそれを併記しておくと更に分かりやすくなりそうです。
最後に、優れているポイントの3つ目として、末尾に策定日や改定日が詳しく記載されているところが挙げられます。改定が定期的に行われていることは、信頼感に結びつきます。



全体的にデザインが非常に見やすく、各教育機関にも見習ってほしいくらいの出来です。
中学校における学校いじめ防止基本方針の好例
中学校における学校いじめ防止基本方針の好例としてご紹介したいのは、鳥取県における湯梨浜中学校の学校いじめ防止基本方針です。
一つ目の優れているポイントとして、最新の年度を記載した表紙をしっかり作っていることが挙げられます。


おそらく毎年表紙の年号を書き換えていることが分かり、表紙のデザインからも非常にキッチリとした印象を受けます。こういった小さな部分が生徒や保護者からの信頼に繋がると考えられます。
二つ目の優れているポイントとして、図によりいじめ認知の流れと情報を集約する担当が明確化されている点です。


情報を集約する担当として「生徒指導主事・教育相談担当・教頭など」が挙げられており、更に、混合されやすい「いじめ防止対策委員会」と「生徒指導委員会」との区別も明確にされていることから、非常に分かりやすくまとまっています。
三つ目の優れているポイントとして、オリジナリティのあるいじめ段階と連携体制が示されていることが挙げられます。


このように、いじめの段階(レベル)ごとで対応や連携体制を予め定めておくことは、不適切な対応を防ぐうえでも有効のように感ぜられます。
他にも、いじめ発見時の対応フロー図や、一次対応から三次対応まで詳しく記載がされていたりと、内容に対して非常に力を入れていることが読み取れます。



いじめを防止しようとする気概が感じられます。適当にテンプレ通りに作っている学校のものとは雲泥の差です。
文部科学省による学校いじめ防止基本方針の例
文部科学省による学校いじめ防止基本方針の例も資料として公開されています。
図は無く無機質な感じを受けますが、記載内容としては参考にすべきかと思われます。
また、巻末の方には「学校基本方針を児童生徒・保護者に対して適切かつ効果的に周知している事例」として、綺麗なカラー仕様の例が挙げられているので、そちらはデザイン面で大いに参考になるかと考えられます。
まとめ
学校いじめ防止基本方針は、いじめを教員が個別に対応するのではなく、学校全体や地域全体の課題として捉えるための共通理解の土台です。
また、方針が公表されていることで、児童生徒や保護者からの信頼や安心に繋がり、教職員は正しくいじめに対応するための指針を持つことに繋がります。
特に大切なのは、学校いじめ防止基本方針を策定して終わりではないという点です。
学校いじめ防止基本方針は、学校の実情や社会状況の変化に応じて、見直し・改善を重ねていく「生きた方針」であるべきです。
定期的に学校いじめ対策組織を中心として見直しを行い、少しずつでも改善を重ねながら、いじめの未然防止に向けてより良い方針を作り上げていくことが重要です。








